海外進出の拠点となる地域商社としての機能を目指して

助言指導支援

企業間連携による海外展開支援事例

elims株式会社

県産農産物を活用した加工食品の製造・販売

elims株式会社（以降：エリムス）は、県産農産物を活用したゼリーやジュース等の企画・販売を展開しています。白桃やマスカットなど岡山を代表する果物をメインに、しっかりとしたコンセプト設計を行い、こだわりの製造方法により加工しています。取り扱う商品は首都圏のギフトをメインに、県内の百貨店はもちろん関西圏のギフトバイヤーからも高評価を得ております。商品の企画や製造については、小回りがきく中小企業の良さを活かし、積極的な試作開発を繰り返し、取引先に対して常に新商品を提案することを心がけています。

ターゲットとする販路拡大先の検討

県産の魅力ある果物をふんだんに取り入れた製品は、当初よりギフトをメイン商品として展開し、県内の百貨店や首都圏から拡大して関西圏でも知名度は徐々に向上しました。創業当初より念頭にあった海外への輸出の事業を創業3年目より着手し始めました。日本の果物は海外でも富裕層に人気で取引されていることに着目し、より健康志向の高い海外の富裕層をターゲットに弊社のこだわりの原料や製法などを用いている加工食品の市場も東南アジアや中国でより細分化され、拡大するであろうと考えるようになりました。

海外に対して積極的な開拓姿勢

海外展開を目指すにあたって、日本からの流通経路が近く、年中気候が暖かく果物の消費量も多いアジア圏にて行われるテストマーケティング事業について積極的に参加し、市場のニーズと手法について研究しました。また、単にテストマーケティング事業に参加するだけではなく、輸出に関する事務手続きについては自らが実際に書類作成を行うことで、そのノウハウを習得していきました。当然、市場ニーズに関する調査もジェトロや関係団体を通じて十分に研究し、現地に行って体験することで、海外で売れる商品の作り方・見せ方について、大きくは味覚について国内のバイヤーとは違う観点を見いだすことで、ポテンシャルの高い輸出商品企画を目指しました。国内同様海外への商品開発も現地に向けた入念なコンセプト作りを行いました。そのため、様々な事業への参加や経験の積み重ねにより入念な調査と下準備を行うことが、中小企業である当社にとって最も重要なリスク回避策となりました。

農産物を含めた海外輸出ノウハウの取得

県内の生産者とのネットワークを徐々に拡大して、加工品の原料として使用する農産品の種類を徐々に拡大していきました。様々な国や地域の方と積極的に商談を行うに当たり、日本産の果物に多大な関心があることに気づき、生産者から直接買い付けを行うことができる弊社のメリットをいかし、生果としての輸出も始めました。輸出を行うにあたっては、既に人気があり販売実績がある県産の果物をメインに取り扱い、新規事業としてのリスク回避を行いつつ、自社の加工食品の販路も徐々に広げていきました。果物については、自社と取引のある中小規模の農家から仕入れて、海外の貿易商社を通じて現地の小売店での展開を行いました。当初は関西空港を利用して空輸や船便で輸出を行ってきましたが、現在では、岡山－ソウル便（大韓航空）がある岡山桃太郎空港を利用し、韓国経由での輸送経路を一から作ってきました。コストや時間を大幅に抑える等、輸送日数を削減することで果物自体の品質を保てるなどメリットが生まれました。もちろん、都度の課題はありますが、一つ一つ対応していくことでノウハウの蓄積が行われ、同社の事業の柱となる実績が生まれつつあります。

地域商社機能を強化し企業間連携を

輸出事業がようやく走り始めた過程で、現地の商社から岡山県産食品に関するニーズがあることに着目し、果物や自社の製品以外にもニーズがある他社の商品も合わせて輸出手続きを行うことで、それぞれに輸送に係るコストの削減や事務手続きの一元化などメリットがあるスキームを取り入れることを検討しました。同様に、県内の中小規模のメーカーが商談する地域や国のターゲットが似通っており、輸送に係るコストやロット、事務手続きの煩雑さなどの課題も同じであったため、当社が取りまとめて行う「地域商社」としての機能を有し、一元化することで手間やコスト、ノウハウの面で中小企業では取り組みにくい輸出業務について、企業間連携による相互メリットが創出されつつあります。また、様々な岡山県産品を販売することで将来的には岡山県への興味やファンを海外で作っていくことができます。消費者へそうした興味を喚起することができれば、輸出やインバウンド事業にも拡大チャンスが広がっていきます。今後は、岡山県中小企業団体中央会が支援する食品事業者等に対して当社の取り組みを紹介し、参画企業を募ることで、当社の地域商社としての機能強化と、県内食品産業の活性化を目指していきます。